倉庫の選び方・探し方 -情報収集から契約までの流れを解説-
物流倉庫の探し方やテクニック、物件の見方やポイント、情報整理の仕方、交渉術などのノウハウを公開。あらゆる倉庫の選び方を紹介します。
目次
STEP1 借りたい倉庫の条件を決める
目的を確認し・予算を決めよう
倉庫を借りることは、その期間の長さやかかるお金の大きさから、自分の家を買うのと同じような重大事です。会社の事業計画を確認しながら、倉庫の必要性を確認し予算を決めます。また、その倉庫で何を行うのか(業務内容)、どのような効果を見込むのかも予算決めと同時に検討をします。
入居時期を決め、検討期間を確保しよう
1)現在の倉庫から借り換え、移転する場合
現在借りている倉庫がある場合は、その契約書を確認しましょう。契約書には賃貸期間、賃貸面積、賃料、各種条件が記載されていると思います。その内容を確認した上でこれから借りる倉庫に関する条件を確認しましょう。また、検討開始時期は解約告知期限の3か月前まで(解約告知が6か月前の場合は9か月前から)には検討を開始することをお勧めします。
2)新規・追加で別エリアに借りる場合
新規・追加で倉庫を借りようとする場合は、借りようとする時期を決めましょう。こちらも6か月前ぐらいから検討されることをお勧めします。検討期間が短いと現在空室の倉庫から選択をせざるを得ず、これから竣工する倉庫、現在他社が使用していて、ちょうど欲しいタイミングで空く倉庫の情報が洩れてしまい、選択肢が少なくなってしまうためです。
業務内容から必要面積と作業規模を考える
前項で決定した売上計画をもとに、必要な保管面積と働く人の人数を想定しましょう。正確な面積がはっきりしない場合は、現倉庫での入出荷量に、新倉庫で想定する入出荷量をざっくり当てはめて大枠を決定します。
現在運用している倉庫がある場合は、そこでの作業内容や取扱い数量を参考に必要な面積、体制などを仮置きして検討を進めます。
STEP2 情報を集める
インターネットで物件情報を探してみよう
入居時期と予算、面積の想定が出来たら、インターネットで基本条件に合う物件があるか探してみましょう。その際にエリアごとの賃料相場も同時に見えてくるため、気になる物件をブックマークして検討します。
インターネットによる物件情報提供は①実務運営会社(倉庫会社・3PL)、②デベロッパ-(倉庫を企画し建設した会社)、③不動産仲介会社を介したものがあります。
倉庫の賃料相場は主に交通の充実度と首都圏までの距離で賃料相場が決まっており、関東地区では大きくは①外環道の内側、②外環道から国道16号の間、③国道16号から圏央道の間、④圏央道の外、で賃料相場が大きく変わります(下図参照)。
同じエリアにあっても賃料が高い、安いなどの条件の差が見えてきますので、自分たちが重きを置いている項目を並べ、比較してみましょう。
インターネット以外の情報源
1)倉庫会社への問合せ
倉庫の情報は住宅と違い、インターネット以外で流通している情報は少ないです。その場合は倉庫会社の問合せフォームに直接連絡してみることをお勧めします。その会社が希望の立地や予算、坪数の物件情報を掲載していなくとも、未掲載の情報を持っていたり、詳しい話を聞いて自分たちが気づかなかった視点から役立つ情報を提供してくれます。
2)金融機関や取引先からの紹介
取引銀行や、取引先からも有益な情報を頂けるチャネルとなります。金融機関は与信がしっかりした倉庫会社を紹介いただけ、取引先は仕事の内容を理解していることから、より自分たちの仕事に合った物件情報を提供頂ける場合があります。
3)イベントへの参加
物流に関するイベントでも倉庫物件の情報が入手できます。国際物流展などのコンベンション、小さいものですと企業交流会や物件内覧会なども頻繁に行われています。紹介よりもハードルが低く直接面談して担当から詳しい話を聞けるのでおすすめです。
STEP3 比較検討をする
細かい条件をリストアップして優先順位を付ける
ある程度の情報を集めたら、物件情報に記載してある情報を並べて比較してみましょう。主な比較検討項目は次の通りです。
①賃貸面積:希望面積により近い広さ
②予算:月額賃料(倉庫・バース、事務所)、賃料以外の費用(敷金、礼金、水光熱費、機械警備費用、その他)
③入居可能時期と契約期間
④立地:住所、用途地域、交通アクセス(ICからの距離、最寄り駅からの距離・時間等)
⑤セキュリティ、駐車場台数、電気容量、空調機器の有無、他
⑥施設の造作の可否
⑦そのほかの付帯設備:休憩室等共用部、福利厚生、最寄駅からの送迎バス等「絶対譲れない」「できれば」「あきらめてもいい」といった具合に、優先順位をつけておきましょう。
絶対に確認したいポイント
倉庫を選ぶ際に絶対に確認しておいた方が良いポイントがあります。それは「営業倉庫認可が取れるか否か」です。営業倉庫とは、国が定める施設要件をクリアした、性能が担保されている倉庫を指します。自社で営業倉庫認可を取得すれば事業所税の減免があったり、倉庫に空きが出た場合は、そのスペースを他社に貸し出すことも可能となります。長期にわたり借りる倉庫ですので、十分な性能を持つ倉庫を選びましょう。
条件がマッチしない場合:契約方法を変える
先にピックアップした、譲れない条件がどうしてもマッチしない場合は、倉庫を賃貸するのではなく、契約方法を変え、作業を倉庫会社に任せる(寄託・業務委託する)形で必要なスペースを確保する方法もあります。寄託/業務委託契約ですと、時期や面積の調整もある程度の幅を持たせることも交渉により可能です。
STEP4 面談する、現場を見学する
物件情報・図面を確認する
候補物件を整理できたら情報提供会社に連絡をし、現地内覧の予約をします。希望に合う物件が見つかったら扱っている会社、見つからない場合は希望に近い物件を扱う会社を2~3社選び、メールや電話で連絡しましょう。この際、同じ物件情報を複数の会社が扱っている場合がありますが、その場合は連絡をしてみて、よりスピーディに、手厚い対応をして頂ける会社に依頼をしましょう。窓口のレスポンスの速さは、物件オーナーとの緊密さを表しているため、良い取引のために重要です。
現地を確認する
窓口会社との日取りが決定したら、倉庫現地を確認します。物件見学はほとんどが現地集合、現地解散となります。倉庫が建っている場所は公共交通機関が充実している場合が少ないため、車で行けるならばカーシェア(タクシーは見学後の帰り便をつかまえられない場合が多い)などの手配をお勧めします。窓口会社が送迎をしてくれる場合もありますので、打診をしてみてもいいでしょう。1日で見学する件数は3件程度を目安としましょう。
現地でのチェックポイント
現地見学の際は寸法が入った図面(位置図、平面図、立面図)の準備をお願いしましょう。現地を見ながら、実際に作業をした際に使いやすいかのチェックをします。必要により断ったうえで写真撮影をしておくことをお勧めします。
また、倉庫内の明るさや、ほこりや汚れなどが無いか、道路付け(トラックやコンテナ車が余裕をもって入れる広さ、高さがあるか)、周辺住民の状況など現地でしか確認できない事項を確認します。共用部分は清掃業者が入っているのか否か、消耗品(トイレットペーパー等)は入居者が準備するのか、福利厚生施設(休憩室、食堂等)は無料で使って良いもの、有料のものなどもチェックしましょう。
STEP5 申し込み・契約をする
意向表明(LOI)
現地見学、内覧し気に入った場合、窓口会社に対して入居時期、入居期間、賃貸面積と希望条件を書面にて申入れ、正式検討の意向表明を行います。この書面をLOI(Letter of Intent)といい、LOIを受領した窓口業者はこの倉庫に対して期間を限った形で優先交渉権を与えます。
条件交渉
窓口業者はLOIにて提示された条件に対して、対応可能な条件を書面にて回答し、お互いの条件が一致したら正式契約へと進みます。条件交渉になる主な項目は以下の通りです。
①入居時期:正式稼働までの様々な準備(引越、採用、設備等)期間の確保
②月額賃料:賃料や敷金、礼金など、発生する費用についての交渉を行います。
③そのほか:働く上で必要な設備、機材の設置等
必要な条件はLOI提出から交渉の期間にクリアにしましょう。契約後は条件の変更は基本的に受け付けられませんので、交渉担当者だけでなく、倉庫で働く人や決済を出す経営陣の要望もしっかり聞き取って交渉に臨みましょう。
現倉庫への解約告知
条件交渉と並行し、新しい倉庫での運用開始が決定してきたら、現倉庫に解約告知を出します。一般的に解約告知を提出できるのは契約満了の1年~半年前の1か月間だけなので、基本は解約告知期間に目掛けて倉庫の探索と条件交渉を進めていくこととなります。
入居申し込み
条件の大筋合意が出来ましたら、決定条件を記載した入居申込書を提出します。入居申込書を提出した時点で他社からの申込は出来なくなります。
LOIを提出しただけでは入居できると決まっておらず、他社が先に入居申込書を差し入れた場合、そちらに権利が移ってしまいますので注意しましょう。
本契約
①賃貸借契約
入居申込書を頂いた窓口会社は、本契約書を作成してきますので、その内容を確認し契約となります。倉庫を借りる場合の契約は「定期建物賃貸借契約」か「普通賃貸借契約」のいずれかとなります(表参照)。
定期借家契約 | 普通借家契約 | |
契約方法 | 公正証書等の書面* | 口頭、書面 |
更新の有無 | 期間満了により終了し、更新が ない(ただし、再契約は可能) | 正当事由がない限り更新 |
期間を1年未満と する賃貸借の効力 | 1年未満の契約も有効 | 期間の定めのない賃貸借と みなされる |
賃料の増減請求 | 特約の定めに従う | 特約にかかわらず、請求可能 |
賃借人の中途解約の可否 | 中途解約に関する特約があればその定めに従う |
②商品の保管を伴う契約
賃貸で倉庫を借りたいが、諸条件が見合う物件がない場合、倉庫会社に商品の保管を依頼することで倉庫のスペースを確保する方法があります。
寄託契約 | 業務委託契約 | |
契約方法 | 書面 | |
対応業務の違い | 入庫・出庫・保管業務 (物品の保管に限る) | 入庫・出庫・保管業務に加え、 依頼主が指定した物流業務 |
契約期間 | 当事者同士が合意した期間 | |
費用 | 固定・変動 | 固定・変動 |
業務への介在 | × | × |
倉庫会社に寄託・業務委託をすると契約時期・賃貸面積の柔軟性が出たり、敷金、礼金が不要(場合により保証金がかかる場合あり)であったりとメリットが多いため、相談して自分たちにマッチした倉庫の借り方を検討することが良いでしょう。
③契約に必要な費用
契約時に必要な初期費用は「月額賃料の4~10カ月分」が目安といわれます。
地域や物件により異なりますが、礼金(仲介手数料)に0~2カ月分、敷金に家賃の3~6カ月分、前家賃として日割り家賃の数日分、契約における印紙代などが必要です。そのほか、移転費用や業務稼働に必要な費用も含めると大きな出費になるので、余裕をもって準備しておきましょう。
重要事項説明
契約書内容が合意されたら締結前に、宅地建物取引主任者の資格をもった人から法律で定められた重要事項説明を受けて、契約書を読み合わせ内容を確認します。
ここで注意したいのは、禁止事項や特約事項、そして契約解除と退去時の原状回復の取り扱い。入居してから「そんな話は聞いていない!」というトラブルにならないよう、しっかり確認しておきましょう。
鍵引渡し
契約書が締結されたら物件の鍵引渡しと現地の最終確認となります。現地確認では倉庫にもともとあった傷や汚れ、使用上の注意などを確認し、引渡書類にサインをして鍵とともに預かります。入居前チェックが漏れますと、漏れた箇所についても契約満了後、原状回復工事を行うこととなりますので、しっかりチェックしておきましょう。
まとめ:倉庫を借りたい、と思ったらまずダイワコーポレーションにご連絡ください。
倉庫を借りることは、その期間の長さやかかるお金の大きさから、自分の家を買うのと同じような重大事ですが、その進め方やポイントはあまり知られていません。
ダイワコーポレーションは、物流倉庫業のプロフェッショナルです。創業以来70年以上にわたり積み重ねてきたノウハウを活かし、お客様の倉庫選び、スペース活用をサポートします。物流全般に関する悩みをお持ちの方は、気軽にご相談ください。
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