適正在庫を実現する在庫回転率の改善法とは?在庫管理の基本を解説

在庫管理は、仕入れから販売までの商品の流れを適切にコントロールする業務です。
この管理が不十分だと、倉庫に売れ残りが積み上がり資金繰りが悪化したり、逆に品切れで販売の機会を逃したりするリスクが高まります。
適正在庫を維持するうえで欠かせない指標が在庫回転率であり、この数値を正しく把握し改善することで、過剰在庫と欠品の両方を防ぐ判断基準が得られます。
本記事では、在庫管理と適正在庫の基本から在庫回転率の計算方法、業種別の目安、改善手順、さらには資金効率との関係までを順を追って説明します。

在庫管理と適正在庫の基本

在庫管理が経営に与える影響

在庫管理は、企業の資金繰りと利益に直結する業務です。商品が倉庫に眠ったままでは仕入代金だけが先に出ていき、手元資金が圧迫されます。
反対に、在庫が足りなければ注文に応えられず、売上を取り逃がすことになります。
過剰在庫を防ぐには、定期的に棚卸しを行い、発注すべき商品と適切な量を見極めることが欠かせません。
在庫管理の担当者が不在のまま発注を繰り返し、在庫を積み重ねた結果として過剰在庫に陥るケースもあります(参照*1)。 そのため、在庫回転率を算出すると、在庫管理の効率性や商品の販売状況を数値で把握できます(参照*2)。

適正在庫の定義と構成要素

適正在庫とは、欠品を起こさず、かつ余剰も抱えない水準の在庫量を指します。
この水準は一律の数字ではなく、業務上の制約や需要の変動幅によって企業ごとに異なります。
適正在庫は一般的に、納入までのリードタイムや製品の発注間隔といった業務制約上持つべき在庫と、需要の上振れや供給の下振れに備える安全在庫の合計で求められます(参照*3)。
つまり「通常の補充に必要な量」と「想定外の変動に備える量」の2つの要素で構成されます。
自社の適正在庫を設計するには、まずリードタイムと発注間隔を正確に把握し、次に過去の需要変動幅から安全在庫の水準を割り出す、という手順で進めます。

在庫回転率の仕組みと計算方法

在庫回転率と回転期間の算出式

在庫回転率とは、一定期間に在庫がどれだけ入れ替わったかを示す指標です。回転率が高いほど在庫が頻繁に入れ替わっており、効率的な在庫運用ができている状態を意味します。
逆に、回転率が極端に低い場合は、滞留在庫や過剰在庫を抱えている可能性があり、資金繰りや保管スペースの面でも改善が求められます(参照*2)。 売上高を使う計算式は「棚卸資産回転率(回転)=売上高÷期末の棚卸資産」です。この式では棚卸資産と売上高の関係が分かるため、財務分析に向いています。 回転期間は「365日÷回転率」で日数に換算でき、在庫が何日分あるかを直感的に把握できます(参照*4)。
売上高ベースと売上原価ベースの2種類の計算式があるため、他社比較や業界平均との照合を行う際は、どちらの基準で算出された数値かをそろえて確認する必要があります。

業種別に見る回転率の目安

在庫回転率の水準は業種によって大きく異なります。自社の回転率が高いか低いかは、同業種の平均値と比較することで判断できます。
売上高ベースの回転率を見ると、

・建設業は12.6回転(回転期間28.9日)
・製造業は9.5回転(38.3日)
・卸売業は15.7回転(23.3日)
・小売業は16.4回転(22.3日)
・情報通信業は27.3回転(13.4日)
・不動産・物品賃貸業は4.3回転(85.2日)

情報通信業は高く、不動産業・物品賃貸業は低い傾向にあります。
また、売上原価ベースでは
・製造業が7.4回転(49.1日)
・卸売業が12.9回転(28.2日)
・小売業が11.5回転(31.9日)

などとなります(参照*4)。
同じ製造業でも扱う商材によって回転率は変わるため、業種平均はあくまで目安です。自社の数値を上記の業種別データと照合し、どの程度の乖離があるかを確認するところから分析を始めます。

在庫回転率の改善手順

現状の可視化と滞留在庫の特定

在庫回転率を改善する第一歩は、商品ごとの回転率を個別に把握することです。
全体の平均値だけでは、どの商品が足を引っ張っているかが見えません。できれば商品別に棚卸資産回転率を把握するのが有効です。
売れている商品と売れていない商品が明確になるため、売れていない商品をどう改善するかの方針が立てやすくなります。
あわせて回転期間も把握することで、今ある在庫が過剰なのか不足しているのかが判明します(参照*4)。
具体的な作業としては、まず全品目番号(SKU)の回転率を一覧にし、回転率の低い順に並べ替えます。そのうえで、一定期間動きのなかった商品を「滞留在庫」として抽出し、値引き販売や廃棄の判断対象として分類します。

需要予測と発注サイクルの見直し

滞留在庫を特定した後は、発注の仕組みそのものを見直します。
過剰に仕入れてしまう原因の多くは、需要予測の精度不足や発注サイクルのずれにあります。
適正在庫は、納入までのリードタイムや発注間隔といった業務制約上持つべき在庫と、安全在庫の合計で決まります(参照*3)。
リードタイムが長い商品ほど発注から入荷までの間に需要が変動するため、その振れ幅を織り込んだ発注量の設定が必要です。
発注サイクルを見直す際には、リードタイムの実績データを集め、仕入先ごとの平均納期と最大納期を整理します。そのうえで、過去の需要変動と照らし合わせ、発注頻度を増やして1回あたりの発注量を減らすか、あるいは逆にまとめ発注でコストを抑えるか、どちらが在庫水準の適正化に寄与するかを比較します。

サプライチェーン全体での情報共有

在庫回転率の改善は、倉庫内の運用だけで完結するものではありません。仕入先や生産拠点との情報連携が、在庫の偏りを解消する鍵になります。
電子タグの活用により、いつ、どこに、何の商品が、どの程度流通しているかを把握しやすくなるとされています(参照*5)。 日本側と海外工場が互いの在庫状況を見ながら、生産のアクセル・ブレーキを調整できる仕組みを構築し、主力品を中心に「実際に売れた分だけ製品を補充する」管理方式を導入した事例もあります(参照*6)。

過剰在庫・欠品を防ぐ判断基準

過剰在庫が生まれる典型パターン

過剰在庫は、在庫管理をしていても需要の読み違えで生じることがあります。特に注意が必要なのは、季節や時期によって売れ行きが大きく変わる商品です。
衣料品や家電製品など季節に合わせて販売する商品は、シーズンが過ぎると売れなくなります。需要を読み違えて大量に発注してしまうと、そのまま在庫が滞留する原因になります(参照*1)。 また、欠品を回避しようとするあまり、在庫基準に対して過剰に積み増してしまうケースも報告されています(参照*7)。
季節商品を扱う場合は、販売期間の終了時期を逆算し、最終発注のタイミングを明確に定めておく必要があります。
欠品回避のための積み増しについても、安全在庫の計算根拠を数値で定め、感覚に頼った上乗せを排除することが対策の基本です。

安全在庫と維持日数の設計指針

安全在庫は、想定を超える需要が来たときに欠品を防ぐための緩衝在庫です。ただし、その計算方法を誤ると、安全在庫が過大になり過剰在庫の原因になります。
一般的な安全在庫理論では販売実績のばらつきを用いて計算しますが、この方法だと季節変動や販促によるばらつきまで上乗せされます。
在庫は想定を超える需要に備えるものであるため、販売計画と実績の偏差を用いたほうが適切に安全在庫を設定できます(参照*3)。
安全在庫の維持日数を設計する際には、過去の販売計画と実績の差分データを集め、その標準偏差をもとに算出します。季節変動が大きい商品は、通年の実績ではなく該当シーズンだけのデータを使って偏差を計算することで、過大な安全在庫を持たずに済みます。

改善事例と導入効果

製造業での在庫削減と収益向上

適正在庫の仕組みを導入した製造業では、在庫量と収益の両面で成果が報告されています。
ポイントは、単純に在庫を減らすことではなく、欠品を防ぎながら在庫水準を最適化した点です。
ある製造業の事例では、適正在庫の自動調整方式を導入した結果、平均在庫量は従来方式と比べて18%増加し在庫管理コストは上がったものの、欠品率が25%低減しました。
販売機会の増加により、トータルで収益が0.4%向上する見通しが得られています(参照*3)。 別の製造業の事例では、海外工場で製造した全量を日本に出荷していた従来方式を改め、海外工場に3日分をストックし売れた分だけ出荷する方式に切り替えました。 その結果、日本側の在庫が約15日分から約7日分に半減し、数億円単位の在庫削減効果が出ています(参照*6)。
さらに別の製造業では、国内在庫を2割削減し、今後の運用で国内在庫の半減を目指してキャッシュフローの改善と抜本的なコストダウンを推進しています(参照*8)。
いずれの事例にも共通するのは、在庫を一律に削るのではなく、販売実績や生産拠点の制約に応じて在庫配分を最適化している点です。自社の在庫構造を仕入先や工場の所在地別に分解し、どこにどれだけの在庫を置くかを再設計する作業が出発点になります。

小売業でのPOS活用と在庫圧縮

小売業では、販売時点情報管理(POS)レジの導入が在庫圧縮の手段になった事例があります。
販売データを即座に記録できる販売時点情報管理(POS)レジは、棚卸し作業の効率化だけでなく、仕入れの精度向上にも直結します。
販売時点情報管理(POS)レジを導入した小売店では、棚卸し作業の負担が大きく軽減し、仕入数への意識も変わりました。
前年比で売上は2.3%アップ、売上高総利益率は11.1%アップし、棚卸残高は前年比で38.6%にまで圧縮されています。その結果、資金繰りも大幅に改善しました(参照*9)。
この事例が示すのは、販売データをリアルタイムで把握できる環境が整えば、仕入れの過不足を早期に修正できるという点です。POSデータを商品別・日別に集計し、在庫回転率の変動を週次で追跡する運用体制を敷くことで、在庫の膨張を未然に防ぐ判断が可能になります。

CCC・資金効率との関係

在庫回転率の改善は、企業全体の資金効率を高めることにつながります。その関係を示す指標がCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)です。CCCとは、企業が原材料や商品仕入などへ現金を投入してから、最終的に現金化されるまでの日数を示す指標で、日数が短いほどキャッシュが効率的に運用されていることを表します(参照*10)。 CCCを短縮するには、売上債権回転期間と棚卸資産回転期間を短くするか、仕入債務回転期間を長くすればよいとされています。具体的な方法としては、売掛金の回収サイトを短くする、棚卸資産を最適数量で維持する、買掛金の支払いサイトを伸ばすといった手段が挙げられます(参照*10)。工場の制約を精緻に考慮しながら、欠品を回避した適正在庫を実現することで在庫回転効率を向上させた事例も報告されています(参照*7)。
在庫回転率の改善は、CCCの構成要素である棚卸資産回転期間を直接短縮する手段です。在庫管理と適正在庫の取り組みを、売掛金の回収や買掛金の支払い条件と一体で見直すことで、資金効率の改善幅はさらに広がります。

おわりに

在庫管理の精度を高め、適正在庫を維持するためには、在庫回転率という共通の物差しで現状を数値化することが出発点です。商品別の回転率を把握し、需要予測と発注サイクルを見直し、サプライチェーン全体で在庫情報を共有する。この一連の手順を地道に積み重ねることが、過剰在庫と欠品の両方を抑え込む基盤になります。
在庫回転率の改善はCCCの短縮を通じて企業の資金効率にも波及するため、経営全体の視点から取り組む価値があります。まずは自社の在庫回転率を業種平均と比較することが、改善の起点になります。

参照

参考

LOGI FLAG|賃貸型冷凍冷蔵倉庫をはじめとする、環境に配慮した冷却設備や自動化設備を導入した先進的な物流施設を提供

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