ラストワンマイルとは?重要性・課題の解決方法について解説
物流におけるラストワンマイルとは、最終拠点である運送業者の営業所からエンドユーザー(顧客)に届くまでの区間のことです。
ラストワンマイルには物流業界の抱える課題が多く含まれています。EC事業者の経営にとって欠かせない要素であるため、「ラストワンマイル問題」とも呼ばれています。
この記事では、ラストワンマイルの定義、重要性、課題、対策について解説します。ラストワンマイル問題の対策を考える際の参考にしてください。
目次
ラストワンマイルの重要性
日本の物流業界において、ラストワンマイルとは物流の最後の区間を指し、運送業者の営業所から各家庭までの物流サービスのことを意味します。
物流業界において、ラストワンマイルの重要性はますます高まっています。なぜなら、EC市場の拡大とともに、物流サービスの強化がEC事業者の重要な販売戦略の一つとなっているためです。
ラストワンマイルの物流サービスとして、具体的に以下が挙げられます。
- 当日配送、翌日配送
- 送料サービス
- 全国配送・越境購入
- 時間指定配送
ラストワンマイルは、物流工程の中でも顧客満足度に直接影響を及ぼす部分です。物流サービスの質が低ければ、ユーザーはストレスを感じ離れていくでしょう。
反対に、きめ細やかな配送が行われれば、ユーザー評価が高まり、口コミなどを通じて企業のブランド価値向上が期待できます。
EC事業者の参入が増え、業者間の競争が激化する中、ラストワンマイルの重要性は今後さらに高まるでしょう。
ラストワンマイルの課題
前述のようなメリットを求めて、ラストワンマイルにおける物流サービスの差別化に取り組むEC事業者も少なくありません。しかし、このラストワンマイルには多くの課題が存在します。
ラストワンマイルの物流サービスが抱える課題は、具体的には以下のようなものです。
サービス | 課題 | 原因 |
---|---|---|
当日配送、翌日配送 | 約束した日に運べない | 配送量の増加ドライバー不足再配達の多頻度化(物流の2024年問題) |
送料サービス | 送料の高騰 | |
全国配送・越境購入 | 配送地域が限られる | 低い採算性の配送業務 |
時間指定配送 | 約束した時間に運べない | 配達困難な家の増加指定時間における不在 |
これらの問題を解決しなければ、EC事業者が他社との競争で生き残り、事業を成長させていくのは困難です。したがって、各課題について理解し、解決策を考えていくことが求められます。
ラストワンマイルの課題は、以下の5つです。
- 配送量の増加
- ドライバー不足
- 低い採算性の配送業務
- 再配達の多頻度化
- 配達困難な家の増加・指定時間における不在
それぞれ詳しく解説します。
配送量の増加
コロナ禍の行動制限とともにEC市場の利用者が増加し、ラストワンマイルの物流サービスの需要が高まっています。この流れは今後も続き、配送量の増加が予測されます。
また、ユーザーのニーズが多様化したことで、配送の小口化や多頻度化が進んできました。まとめて大ロットの商品を注文するのではなく、こまめに複数の商品を注文する人が増加しています。
結果として配送件数が増え、物流業者は効率的な配送を求められている状況です。
ドライバー不足
ドライバー不足は、物流業界におけるラストワンマイルの大きな課題です。少子高齢化による慢性的な労働力不足が背景となり、特にドライバー不足と高齢化は深刻な問題となっています。
長時間労働や低賃金といった厳しい労働環境は、ドライバー不足をもたらした原因の一つです。労働条件の厳しさにより、若年労働者が他業界へ流出してしまい、高齢化の問題を解決するのが難しい状況です。
さらに、ドライバーの労働時間の制限による「2024年問題」も影響を与えています。ドライバーの時間外労働時間に年間960時間の上限が設けられるため、ドライバーの収入減が懸念されます。
収入減により生活が成り立たなくなると、他の業界へ転職する人も出てくるかもしれません。このような状況がドライバー不足をさらに悪化させます。
低い採算性の配送業務
日本全域での配送を実現する場合、運送会社の採算性の悪化が懸念されます。なぜなら、地方の配達は都市部に比べて配達件数が少なく、配送距離が長くなる傾向があるからです。
積載効率が悪くなりやすい地方配送では、都市部以上に収益性の分析や改善が求められます。
再配達の多頻度化
宅配便の個数が増えるにつれて、不在時の再配達件数が増加している点も課題の一つです。再配達の多頻度化は、ドライバーの負担を増やし、運送会社のコスト増大をもたらします。
具体的には、トラックの燃料費、倉庫の保管費、人件費などが増大し、企業の収益性を圧迫します。
再配達が多くなると、他の荷物の配送にも影響し、配送時間の遅延や顧客満足度の低下を招く可能性があります。
配達困難な家の増加・指定時間における不在
昨今、主に防犯上の理由から自宅の表札に名前を出さない家が増えており、納品時に配達先を探す時間が大幅に増加しています。納品に時間がかかると路上停車も困難となり、駐車場に停車をして台車で広域のお宅に配達しなければなりません。
また、オートロック付きのマンション等にお住まいの方も多く、宅配ボックスの数も不十分であることから、1軒1軒在宅確認しながら入場する手間が生じるケースもあります。
さらに、指定時間に納品先に到着しても不在である場合や、防犯上の理由から扉を開けてもらえない場合があり、再配達をせざるを得ないケースが一定数存在します。
再配達が多くなると他の荷物の配送にも影響が及び、配送時間の遅延や顧客満足度の低下を招いてしまうでしょう。
ラストワンマイル問題の解決方法
ラストワンマイル問題の解決方法は、以下の4つです。
- 受け取り方法の多様化を進める
- 共同配送を実施する
- 新しい配送手段を活用する
- 新しい物流サービスを活用する
自社に適した方法を見つけるためにも、それぞれの解決策を詳しくチェックしていきましょう。
受け取り方法の多様化を進める
(1)配送会社の営業所や郵便局留め、コンビニエンスストアでの受け取り
ECサイト上に、注文時の納品方法として「営業所・郵便局留め」「コンビニエンスストアでの受け取り」のメニューを追加する方法があります。
わずかな追加費用で配達時の不在による持ち戻りを無くし、お客様も自分の都合の良い時間に受け取れるメリットがあります。
(2)宅配ロッカーの活用
マンションの宅配ロッカーの他、駅やスーパーなどの店舗内・屋外に設置した宅配ロッカーの普及にも要注目です。Packcity Japanが運営する「PUDOステーション」の宅配便ロッカーを見かけたことのある人も多いことでしょう。
営業所・郵便局留め同様のメリットが期待できます。
(3)置き配
大手EC事業者が始めた「置き配」ですが、配送方法として一般化し、現在は宅配業者も参入、多くのプラットフォーマーが活用し始めています。
置き配であれば受取人の不在時にも荷物を届けられるため、再配達の手間がかかりません。玄関前に置くものや、ガスメーターボックスなど指定場所に置くサービスがあります。
(4)配送アプリ
ほかにも、郵便局やお届け予定日時の通知を受け取れる「事前の配達日連絡サービス」を利用してもらうことで、再配達の頻度は減らせます。ヤマト運輸の「クロネコメンバーズ」では、配達日当日の朝に配送予定通知が来て、その場で時間変更が可能です。
再配達が発生しにくい配送サービスを受取人に提供することで、顧客満足度を高めながら配送効率の向上が図れます。
共同配送を実施する
共同配送とは、複数の企業が共同で倉庫管理や輸送を行い、配送効率の向上を図る取り組みです。
これまでは、同じエリアに拠点を持つ企業が同じ方面に荷物を輸送する場合であっても、別々に手配したトラックを利用していました。
それぞれのトラックの荷台にスペースが空いていたとしても、企業間の連携がないため、積載効率の悪い状態での配送を余儀なくされていました。
共同配送の実施によって、複数の企業の荷物を同じトラックに積載して一括配送できれば、配送コストの削減が期待できます。
新しい配送手段を活用する
新しい配送手段の活用は、物流業界に大きな変革をもたらし、ラストワンマイル問題の解決につながる可能性があります。
例えばドローンによる配送は、渋滞を回避し配達時間の短縮化が実現できるため、ドライバー不足問題の対策として有効です。
また、自動配送ロボットの実用化に向けた実験も進められています。自動配送ロボットとは、物流拠点や店舗から出発し、歩道などを通行して荷物を自動配送するロボットのことです。ドライバー不足の解決手段として注目されており、早期の実用化が期待されています。
新しい技術以外にも、自転車や台車を活用した配送を導入する企業も存在します。環境に優しいことに加えて、小回りがきくことから効率的な配送が実現可能です。
新しい物流サービスを活用する
以下の新しい物流サービスを活用することで、ラストワンマイル問題の解決が図れます。
(1)動態管理システム
動態管理システムとは、スマートフォンの位置情報と配送計画を連動させ、配送の進捗状況を把握するシステムのことです。
デリバリーサービスで広く知られるようになりましたが、動態管理システムを導入することで、配送状況をリアルタイムに把握し、配達現場におけるドライバーの困りごとを即座に解決できます。
例えば、渋滞情報に基づき最適な配送ルートを伝えたり、配達先に遅配を伝えたりすることが可能です。動態管理システムの導入は配送効率を高めるだけでなく、ドライバーの負担も軽減します。
(2)配達の効率化に寄与したユーザーにポイントを付与
一部のEC事業者では、配達に通常よりも長い時間がかかる日を選択したり、宅配便ロッカーでの受け取りを選択したりしたユーザーにポイントを付与しています。貯まったポイントはECサイト内で利用可能です。
こうした取り組みは、配達の時間に余裕を持たせる狙いや、再配達の回数を減らす狙いを持っています。運送会社とユーザー双方にメリットのある仕組みと言えるでしょう。
まとめ:ラストワンマイルについてのご相談はダイワコーポレーションにお任せください
ラストワンマイル問題の解決を図る方法としては、「受け取り方法の多様化」「共同配送の実施」「新しい配送手段の活用」「新しい物流サービスの活用」などが考えられます。
問題を根本的に解決するためには、複数の方法を組み合わせつつ、多角的なアプローチが必要です。自社の物流課題に対する効果的な解決策を特定し、長期的な改善に取り組みたい場合は、専門家への相談が推奨されます。
ダイワコーポレーションは、創業以来、70年以上にわたってさまざまな物流課題の解決に取り組んできた、物流倉庫業のプロフェッショナルです。ラストワンマイル問題にお悩みの荷主様は、ぜひ一度ダイワコーポレーションにお問い合わせください。
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