改正物流効率化法で荷主がやるべきこと完全ガイド|特定荷主の判定からCLO選任・中長期計画まで

2026.08.25
改正物流効率化法(改正物効法)は、2025年4月からすべての荷主に物流効率化に向けた努力義務が課され、2026年4月からは一定規模以上の荷主を対象とした特定荷主制度が施行されています。前年度の取り扱い貨物量が基準以上となる荷主は、特定荷主として指定を受け、追加の義務に対応する必要があります。押さえるべき要点は次のとおりです。

・全荷主に「積載効率の向上等」、「荷待ち時間の短縮」、「荷役等時間の短縮」という3つの努力義務が課される
・第一種荷主、第二種荷主はそれぞれの区分で前年度の取り扱い貨物重量が9万トン以上となる場合、特定荷主の指定対象となる
・特定荷主にはCLO(物流統括管理者)の選任、中長期計画の作成・提出、定期報告などの義務が課される
・届出や中長期計画、定期報告には提出期限があり、未提出也命令違反などには罰則が設けられている

改正物効法と物流2026年問題の全体像

持続可能な物流を実現するための3つの努力義務を表すイラスト

改正物効法の目的と背景

改正物効法は、トラック運送を持続可能なものにするために、荷主と物流事業者の双方に取り組みを求める法律です。

2026年4月からは、一定規模以上の荷主・物流事業者を「特定事業者」として指定し、中長期計画や定期報告などの作成・提出などを義務付ける制度が施行されています(参照*1)。国は、「物流効率化の推進に関する基本的な方針」において、令和10年度までに1運行当たりの荷待ち・荷役等時間を計2時間以内とし、日本全体のトラック輸送の積載効率を44%へ向上させることを目標として定めています(参照*2)。

この背景を踏まえると、法律の射程はトラック会社の運行改善だけではありません。発注条件や納品条件、受入体制など、荷主側の実務にも見直しを求める構造になっています。

2025年4月と2026年4月の施行スケジュール

改正物効法は2段階で施行されており、荷主に求められる水準が段階的に引き上げられます。

2025年4月からは、貨物を発送する発荷主と受け取る着荷主を含むすべての荷主に対し、物流効率化に向けた取り組みに関する努力義務が課されています。具体的には、「積載効率の向上等」「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」の3つの取り組みが求められています。また、2026年4月からは、年間の取扱貨物重量が9万トン以上の荷主が特定荷主として指定され、中長期計画の作成や定期報告などが義務付けられています(参照*2)。

この二段構えのスケジュールは、規模を問わず全荷主が改善に着手したうえで、一定規模以上の荷主に追加の義務を課す制度となっています。自社が9万トン基準の周辺にある場合、努力義務の段階から実務準備を進める意味があります。

荷主に課される3つの努力義務

改正物効法では、荷主が取り組むべきテーマとして3つの領域が重点に置かれています。

荷主企業(発荷主、着荷主)や物流事業者に対し、トラック輸送の効率化に向けた規制的措置として、「積載効率の向上等」「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」の3点が重点とされています(参照*3 )。調査結果では、荷主について、積合せや帰り荷の確保等を行うための時間確保が85%、関係部門間の連携が83%まで実施が進んでいる一方、手積み・手降ろしやパレット養生不足など荷主側の改善が進まず、荷待ち5時間超が発生している現場もあります(参照*1)。

3つの重点は、単に運送会社を選ぶ話ではなく、発注ロットや納品時間、荷姿の標準化など、荷主の業務プロセスに関わる論点です。取り組みの成果を数値で示せる状態にしておくことが、義務対応にもつながります。

特定荷主の定義と判断基準

特定荷主の定義と判断基準を表すイラスト

第一種荷主と第二種荷主の違い

物流効率化法では、一般的な「発荷主」「着荷主」という区分とは別に、運送契約の有無によって「第一種荷主」と「第二種荷主」に分類しています。

第一種荷主とは、自社の事業に関して継続的に運送契約を締結する事業者を指します。一方、第二種荷主とは、自らの事業に関して、他の事業者が雇用するトラックドライバーから貨物を受け取る、または引き渡す事業者を指します。物流効率化法では、このように貨物を送る・受け取るという役割だけではなく、運送契約の有無によって荷主を区分しています。

さらに、単年度の取扱貨物重量が9万トン以上となる一定規模以上の荷主は「特定荷主」として指定されます。特定荷主には、中長期計画の作成、定期報告、物流統括管理者(CLO)の選任などの義務が課されるため、まずは自社が第一種荷主・第二種荷主のいずれに該当するかを確認したうえで、取扱貨物重量を把握しておくことが重要です(参照*3)。

年間9万トン基準と算定方法

特定荷主に指定されるかどうかは、前年度の取扱貨物重量が年間9万トン以上であるかどうかによって判定されます。

第一種荷主としての取扱貨物重量が年間9万トン以上である場合は、特定第一種荷主として指定されます(参照*4)。なお、第一種荷主と第二種荷主の取扱貨物重量はそれぞれ別に算定します。第一種荷主として9万トン以上であれば特定第一種荷主、第二種荷主として9万トン以上であれば特定第二種荷主の指定対象となります。

取扱貨物重量は、実測のほか、単位数量当たりの重量に数量を乗じる方法、容積から重量へ換算する方法、トラックの最大積載量又は平均積載量を用いる方法、売上額又は仕入額から推計する方法など、複数の方法により算定できます。

算定で見落としやすい範囲

9万トンの基準を確認する際は、出荷だけで判断してはいけません。工場から取引先への出荷だけでなく、自社工場から自社倉庫への横持ち輸送や、第一種荷主・第二種荷主として対象となる貨物も算定対象となるためです(参照*4)。

また、指定基準である年間9万トン以上は、日本全体の貨物量の約半分をカバーする規模として設定されています(参照*2)。そのため、出荷・入荷・拠点間輸送といった物流の流れごとに、自社が第一種荷主または第二種荷主のどちらに該当するかを整理し、それぞれの区分ごとに取扱貨物重量を確認することが重要です。

特定荷主に課される3つの義務

特定荷主の3つの義務をまとめたイラスト

CLO(物流統括管理者)の選任

特定荷主に指定された企業は、物流統括管理者を経営幹部から選任する必要があります。

物流統括管理者の選任については、自社における物資の流通全体を統括管理し、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者を経営幹部から選任する必要があります(参照*3)。CLO(物流統括管理者)は、物流効率化の取り組みを全社横断的に推進する役割です。

経営幹部レベルの人材配置に加え、実務を担うチームの編成も課題になります。役員の意思決定と現場改善を橋渡しできる体制が、CLO機能の実効性を左右します。

中長期計画の作成と提出

特定荷主は、荷待ち・荷役時間の削減と積載効率向上に関する中長期計画を国へ提出しなければなりません。

中長期計画には、運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量増加、運転者の荷待ち時間・荷役等時間の短縮に関する実施措置や実施時期、目標などを記載する必要があります(参照*4)。長期計画は毎年度の提出を基本としつつ、計画内容に変更がない場合は5年に一度の提出となります。なお、国は物流効率化法における目標として、荷待ち・荷役等時間の短縮や積載効率44%の実現を掲げています(参照*2)。

計画は数値目標と実施時期をあわせて整理することが求められるため、改善施策とKPIを紐付けて管理できる体制をあらかじめ整えておくことが重要です。

定期報告の実務

特定荷主の指定を受けた翌年度から毎年度、物流効率化に向けた取り組みの進捗状況を報告する必要があります。

報告事項には、判断基準の遵守状況、関連事業者との連携状況、荷待ち時間・荷役等時間の状況などが含まれます(参照*6)。定期報告を円滑に行うためには、物流KPIの取得・集計・承認までのプロセスを標準化し、継続的に進捗を管理できる仕組みを構築しておくことが重要です。

対応スケジュールと届出の実務

第一種荷主、第二種荷主または連鎖化事業者のそれぞれの区分において、前年度の取扱貨物重量が9万トン以上となる場合は、事業所管大臣への届出が必要です。届出内容を基に指定基準への適合が確認されると、特定事業者として指定されます(参照*5)。

届出先は、事業区分によって異なります。

事業区分届出先
荷主・連鎖化事業者(メーカー・卸売業・小売業など)業種に応じた事業所管大臣(地方経済産業局、地方農政局、地方運輸局など)
貨物自動車運送事業者国土交通大臣(地方運輸局などを経由)
倉庫業者国土交通大臣(地方運輸局などを経由)

特定事業者に指定された後は、届出だけでなく、CLOの選任、中長期計画の作成・提出、定期報告など継続的な対応が求められます。制度開始後に慌てることがないよう、担当部署や責任者をあらかじめ決め、社内の対応体制を整備しておくことが重要です。

違反時の勧告・命令・罰則リスク

改正物効法の違反リスクを表したイラスト

改正物効法では、すべての荷主に課される努力義務と、一定規模以上の特定荷主に課される義務とで、対応が不十分な場合の取扱いが異なります。

すべての荷主については、物流効率化に向けた措置を適確に実施するために必要があると認められる場合、国が判断基準を勘案して指導・助言を行うことがあります。また、国は荷主等の取り組み状況について調査し、その結果を公表することとされています (参照*1)(参照*2)。

特定荷主については、荷待ち時間・荷役等時間の短縮や積載効率の向上などに関する措置の実施状況が、国の判断基準に照らして著しく不十分である場合、必要な措置を講じるよう勧告を受けることがあります。勧告に従わない場合はその旨が公表され、さらに、正当な理由なく必要な措置を講じない場合は命令の対象となります。この命令に違反した場合は、100万円以下の罰金が科されます(参照*6)(参照*7)。

また、特定荷主の指定基準重量を上回っているにもかかわらず指定に係る届出を行わない場合や虚偽の届出をした場合、中長期計画を提出しない場合、定期報告を行わない場合又は虚偽の報告をした場合などは、50万円以下の罰金が科されることがあります。報告徴収に応じない場合や虚偽の報告をした場合、立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した場合も同様です。

特定荷主がCLOを選任しなかった場合は、100万円以下の罰金が科されます。また、CLOの選任又は解任の届出を行わない場合や、虚偽の届出をした場合は、20万円以下の過料に処されます(参照*7)。

企業にとっては、罰金や過料だけでなく、勧告に従わなかった場合にその事実が公表される可能性がある点にも注意が必要です。法令対応の遅れを防ぐため、届出、中長期計画、定期報告、CLOの選任・届出について、それぞれ担当者と期限を明確にして管理することが重要です。

物流効率化を進めるための選択肢

自社対応の限界と3PL活用のメリット

改正物効法への対応は、社内リソースだけで完結させるのが難しい場面もあります。

外部の寄託倉庫を採用したり、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者に物流を一括で委託する場合でも、自社事業の貨物の輸配送に関しては第一種又は第二種荷主に該当する場合があります(参照*3)。また、予約システム導入や積込時間の共有、伝票事前準備により、荷待ちゼロ化とドライバーの時間活用が進んでいる一方、手積み・手降ろしやパレット養生不足など荷主側の改善が進まず、荷待ち5時間超が発生している現場もあります(参照*1)。

物流業務を外部に委託している場合でも、自社が荷主に該当するかを確認し、該当する場合は荷主として必要な対応を行う必要があります。 一方で、倉庫運営や配車ノウハウを持つ外部と組むことで、荷待ち短縮やパレット化などの改善を進めやすくなります。委託範囲と自社が担う責任範囲を、契約時に整理しておくことが実務のポイントです。

積載効率・荷待ち時間改善の共同輸配送・データ連携による改善

積載効率の向上や荷待ち時間の短縮は、自社だけで完結する取り組みだけではなく、取引先や物流事業者と連携しながら進めることが重要です。

改正物流効率化法では、荷主に対して積載効率の向上や荷待ち時間・荷役等時間の短縮に取り組むことを求めており、その具体的な手段として、共同輸配送の推進や物流データの共有・活用などが挙げられています。複数の荷主や物流事業者が連携することで、車両の積載率向上や輸送の効率化、ドライバーの負担軽減などが期待できます(参照*8)。

また、受発注や配送に関する情報をデジタル化し、物流データを関係者間で共有することは、荷待ち時間の短縮や輸配送計画の最適化につながります。こうした取組は、物流現場の生産性向上だけでなく、改正物流効率化法で求められる物流効率化を進めるうえでも有効な手段とされています(参照*8)。

共同輸配送やデータ連携は、自社単独では実現が難しい場合もあります。そのため、取引先や物流事業者と協力しながら、自社の物流に適した改善策を検討し、継続的な物流効率化につなげることが重要です。

おわりに

改正物効法への対応は、単なる法令遵守ではなく、自社の物流体制を見直し、生産性や輸送品質を向上させる機会でもあります。

まずは、自社が第一種荷主・第二種荷主のどちらに該当するかを整理し、それぞれの取扱貨物重量から特定荷主の指定対象となるかを確認することが重要です。対象となる場合はCLOの選任、中長期計画の作成、定期報告などの対応を計画的に進めることが重要です。また、共同輸配送や物流データの活用、3PLとの連携なども視野に入れながら、自社に適した物流効率化を推進していきましょう。


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